茨城の民話Webアーカイブ

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唐ヶ崎長者

カラガサキ チョウジャ

伝説

いじわるな人が登場するおはなし|やさしい人が登場するおはなし|殿様や武将が登場するおはなし

原文

 これは行方市の西蓮寺に伝わる話です。
 昔、神様のお告げで酒となる湧水を打った親孝行息子がおりました。その後に鹿島へ向かう大道沿いに唐木造り白檀の門構え、三百間四方を土手で回すほどの長者となり、唐ヶ崎長者と呼ばれておりました。しかし、長者夫婦には病弱な一人娘がおりました。このため、長者夫婦は西蓮寺薬師如来に祈願して、その功徳によってこの娘は無事に成長しました。
 数十年が過ぎて、この娘も老婆になっておりましたが、そこにちょうど源義家の軍勢が奥州征伐の途中に立ち寄りました。
 義家たちは長者に食事を用意してくれぬかとお願いしましたが、長者は、お武家様に食べされるようなごちそうはございませんと一度断ったのです。しかし、それでもよいから何か用意してほしいと懇願され、長者が用意した料理がとても豪勢で、これは大変な長者だ、後々生かしておけば大変な災いになるに違いないと、義家はこの長者一族を皆殺しにしてしまったのです。
 しかし、この老婆だけは生き残り、一族の冥福を祈って供養し、念仏三昧の余勢を送りました。今でも九月の西蓮寺の常行三昧会には西蓮寺婆さんとして、その徳を称えているといいます。
 この伝承は長者没落譚ですが、結論としては西蓮寺への信仰を進める伝承に落ち着いています。薬師如来の加護によって成長した娘は源義家の虐殺にも生き延び、死ぬまで念仏三昧だったと言います。「西蓮寺婆さん」自身が念仏三昧の生涯を送り、かつ信仰対象にもなっているわけで、理想的な信者の手本として伝承されてきた存在でしょう。
 現在、寺に祀られているこのおばあさんの像は、「おびんずるおばあさん」としてなでられたりさすられたりしています。

 

市町村 行方市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和51年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の13月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 茨城のちょっと面白い昔話
収録資料名(ヨミ) イバラキ ノ チョット オモシロイ ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P52 〜 P54
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.12.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥650
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊4)」とある。

このおはなしが伝えられた地域