信太小太郎伝説
シダ コタロウ デンセツ
殿様や武将が登場するおはなし
原文
信太(しだ)小太郎は、美浦村にある「劇団宙(そら)の会」という市民劇団の演目「信太の小笛」で名前を知った。
これはこの会の創設者である元美浦村村長の市川紀行さんの創作物語ですが、この地に伝わる信太小太郎の伝説がモチーフになっています。この伝説を紹介しましょう。
平将門は、今の美浦村の豪族大須賀内記(平国香の部下とも言われる)の娘苅萱姫(さくらひめ)を妻(妾)に迎えました。しかし、将門と国香が争うことなり、国香が死に、都からは将門追討の命が下ります。その戦況が激しくなった時に苅萱姫は実父の大須賀家に身を寄せました。このときすでに、苅萱姫は将門の子を身ごもっていました。
将門が流れ矢にあたり亡くなってしまい、残された苅萱姫は、美浦村大須賀にある来迎院で将門の子供を産みました。この将門の子はこの地で育ち、その子供(将門の孫)信田文国(ふみくに)は信太の国を治める領主となりました。その文国の子が小太郎ですが、小太郎が生まれてすぐに父文国は他界してしまいました。
小太郎の上には姉がおり、「小山の太郎行重」に嫁いでいましたが、行重は力を持っていて、領地全体を奪った上に、小太郎とその母親を追い出してしまいました。
ここから小太郎の流浪の旅が始まったのです。さらに行重に嫁いでいた姉もその後、家を追い出され、小太郎を探しに旅に出ます。
家を追い出された小太郎は旅の途中、悪い人買いあってしまいました。そして、あちらこちらに売られていき、行く先々で大変な苦労を重ねます。各地を転々として行き着いたところが北の端、陸奥の国でした。ここで小太郎は塩商人のところで潮汲みの人足となり働いていました。当時の塩汲みは大変な重労働でした。
ある日、塩汲みを熱心にしているこの若者をこの地の領主が通りかかり目についたのです。領主はこの若者を見て、顔つきなど只者ではないと感じたのです。そして若者を呼んで詳しく話を聞いたのです。小太郎は自分の生い立ちなどを話しました。そして領主は、小太郎があの将門の血を引く者だと知り、自分に子供がいないために小太郎を自分の後継として育てることにしました。
それから何年かして、小太郎はその領民の信望も高くなり、周りにたくさんの味方ができました。そしてその味方の軍勢を率いて、故郷信太の庄の「行重」を攻め滅ぼしました。そして信太で再び住民に慕われて領地を拡大して行きました。そして小太郎を探して旅に出ていた姉も無事に戻ってきたのです。
市町村 | 美浦村 |
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原文著者 | 木村 進 |
原文著者(ヨミ) | キムラ ススム |
生年 | 1948年 |
原文著者備考 | 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる 現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表 昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒 大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。 著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員 |
原文著者 | LaLa mosura |
原文著者(ヨミ) | ララ モスラ |
原文著者備考 | イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。 |
媒体 | zine |
収録資料名 | 茨城のちょっと面白い昔話 |
収録資料名(ヨミ) | イバラキ ノ チョット オモシロイ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | ふるさと風の文庫 |
民話ページ | P36 〜 P44 |
収録資料出版社 | ふるさと”風”の会 |
収録資料出版年月日 | 2016.12.1 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | ¥650 収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。 奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊2)」とある。 |
このおはなしが伝えられた地域