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頭白上人伝説:飴を買う幽霊

トウハク ショウニン デンセツ アメ オ カウ ユウレイ

伝説

お坊さん、神主さん、小僧が登場するおはなし

原文

 戦国時代の初め頃、現在の旧新治村(現土浦市)の筑波山麓付近に一軒の飴屋があった。
 ある日のこと、夕方暗くなってきたので、店主は店じまいをすることにして戸を締めた。すると、しばらくして誰か戸をたたいた。店主が戸を開けると、髪の毛が乱れた一人の女が一文銭を差し出して、
「どうかこれで飴を売っていただけませんか?」
と悲しげに話してきた。
 店主はもう店仕舞をした後なので断ろうとしたが、その姿や恰好を見て、どことなくあわれに思って飴を売ってあげた。女はお礼を言ってそのまま帰って行った。また次の日も、その次の日も薄暗くなってから女は一人で飴を買いにやってきた。
 そして6日目に
「もうこれしかお金を持っていませんので、これが最後です」
悲しそうに女はいうと最後の飴を大事そうに持って力なくとぼとぼと帰って行った。店主は心配になり、そっと女の後をつけて行った。すると女は町はずれの墓地のあたりで消えてしまった。店主は怖くなって、恐る恐る墓地のほうに近づいていくとどこからともなく赤ん坊の泣き声がした。
 店主は村人を集めてきて墓地の赤ん坊の泣き声のする墓を掘り起こした。すると、そこには女の亡骸とそのわきで飴をなめている赤ん坊が発見された。この女はこの近くに住んでいて、臨月であったが数日前に賊に襲われて殺されてしまったのです。これを哀れんだ村人がこの墓地に埋葬したのでした。墓の中で女は子供を産み、幽霊となって三途の渡り賃であった六文銭をもって子供に飴を買いにあらわれていたのです。
 その時に生まれた赤ん坊は近くの寺に預けられて元気に育っていった。その後この赤ん坊は僧侶となり、全国各地で修業を重ね、天台宗の名高い高僧となった。生まれた時から頭の髪の毛が真っ白であったので「頭白上人」と呼ばれ、多くの人々に慕われた名僧になったのです。

 

市町村 土浦市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 茨城のちょっと面白い昔話
収録資料名(ヨミ) イバラキ ノ チョット オモシロイ ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P1 〜 P3
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.12.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥650
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊2)」とある。

このおはなしが伝えられた地域