茨城の民話Webアーカイブ

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新池の狐

シンイケ ノ キツネ

伝説

動物が登場するおはなし

原文

 むかし、石岡から小川につがる道は「原道」といわれ、道の両側は松林でおおわれて人通りも少ない寂しいところであったそうです。その原道の兵崎地区の谷津に新池という池がありました。そして、ここには古い狐が棲んでいて、よく通行人を化かすと言われておりました。
 ある明治の初め頃の夜に、志筑(しづく)に住んでいた男が、小川での用事をすませての家への帰りを急いでおりました。そして男が丁度この池の付近にさしかかった時に、行く手に一人の美しい女の人があらわれました。そして「旦那さま、どちらへお越しですか」とやさしく声をかけてきたので、男は思わず「はい、志筑へ帰るところです」とこたえてしまいました。するとその女の人は「私も志筑へまいるところです。どうか一緒にお連れ下さい」と言ってきたのです。
 その男は噂も聞いており、少し疑わしい気もしたのですが、女性の美貌に目がくらみ、まあこんな女性となら道中も楽しくなると考え、仲良く二人で府中の町々を通り、宮下を過ぎたあたりまでやってきました。するとその女性は「私はここで失礼します」と言って、燈の見える一軒の家の中に入っていきました。そして男は少し不審に思い、女性の後をつけてその家の垣根の外に立って中の様子をうかがっていました。すると、家人と挨拶する女性の姿が障子に映り、続けてお土産の万頭(まんじゅう)の包みを開く姿が映りました。そして同時にそこには狐のしっぽが映ったのです。
 それを見た男は、この女性が狐の化身と思い、「そりゃ、いけねえ!それは饅頭じゃなくて馬糞だよ」と叫んで、家の中に飛び込んだのです。ところがどうでしょう、そこは家ではなく原町の新池であったのです。この男はとうとう池におぼれて死んでしまいました。
 このようにこの新池は、幾人も尊い人命を奪ったので、「死池」とも呼ばれるようになったとのことです。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P70 〜 P72
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

このおはなしが伝えられた地域