茨城の民話Webアーカイブ

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小町伝説と北向観音

コマチ デンセツ ト キタムキ カンノン

伝説

神様や仏様が登場するおはなし|神秘的なおはなし

原文

 ☆ 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに

絶世の美女といわれた小野小町も年をとってくるとやはりその美貌も徐々に世間の噂にも上らなくなってきた。この晩年がどのようであったのか? 土浦市と石岡市にまたがる地方に面白い話が残されている。
 小町はもう晩年に近づいてきた頃、昔の美貌もまだ残っておりましたが肌も荒れ、やはり往年の面影はかなり薄れておりました。都の占いで、東国に行けば肌もきれいになる場所がありこの世の浄土があると聞いて東国から陸奥国への巡礼の旅をする決心をしました。生まれが出羽国(秋田)であり、親類も陸奥国にもたくさんいたのでそちらへも行ってみたいと思ったのです。そして筑波山の麓の清滝観音までやってきました。しかし長旅がたたりこれ以上先に進むことができず、この村長(むらおさ)小野源兵衛氏宅にてしばらく逗留することになりました。
 しばらくお世話になり大分疲れも癒され、近くの清滝観音をお参りしたりしておりました。しかし疲れと長旅の影響で顔にはイボができ、何とも哀れな姿に、村の人びとからこの山を越えた向こう側に病を癒してくれ、イボとりでも効能があると評判の北向観音があることを聞いたのです。そこにはみやこでも有名な高僧行基が彫った観音像があるというのです。山はそれほど高くは無く小町の足でも何とか登れそうです。
 天気の良い日にこの小野村から裏山に登りました。そして反対側の山ふもとにある北向観音に参拝しました。途中山の上の石に腰かけ汗を拭いて一休みすると、そこから北向観音までわずかでした。お堂の下にはきれいな池や川が流れております。小町はその池に姿を映し、衰え、イボもある顔をながめため息をつきました。そして北向観音の観音様に必死にお願いしました。するとどこか体も軽くなり気分も良くなってきたのです。その後、下の池に下りて、水を汲んで飲もうと手を水の中に入れました。小町はそこに映った自分の顔をみておどきました。あのイボはいつの間にか消え去り、肌のつやも良いようです。うれしくなり小町はそこの水で顔や肌を洗い穢れを落として、元気になったのでまた山を越えて小野村に戻って行きました。
 北向観音は現世の幸せを叶えてくれるとされます。これは仏が北を向くと拝む人は南向きになります。このため南の天竺の方に願いが届き、現世の御利益が得られると考えられているのです。
 すっかり元気になり、小野家での暮らしも長くなり、また陸奥国への旅も続けようか考えるようになりました。しかし、寄る年なみには勝てないものです。元慶7年(883年)に69歳で病に罹りとうとう帰らぬ人になってしまったのです。小野家では敷地の近くに小町の墓をつくり毎年供養を重ねてきたと言います。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P53 〜 P56
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

このおはなしが伝えられた地域