茨城の民話Webアーカイブ

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三村落城秘話

ミムラ ラクジョウ ヒワ

伝説

動物が登場するおはなし|殿様や武将が登場するおはなし

原文

 戦国時代はここ常陸府中でもこの地に綿々と続いてきた平氏の名門大掾氏も多くの敵に囲まれる状態に陥っていた。室町幕府も天正元年(1573)に15代将軍足利義昭が京を追放されてその幕を閉じた。その同じ年に大掾氏も府中を取り囲むように出城や砦を設け、そこに兄弟や腹心の家臣を配し、周りからの敵と対峙していました。
 府中(石岡)から高浜の川を渡った高台には三村城(今の三村小学校の場所)があり、南からの天敵である小田氏に対する防御を固めていた。そこの城主は府中城の城主大掾(平)貞国の弟である大掾(平)常春であった。
 天正元年二月、府中の城主、大掾(平)貞国(常春の兄)は、小川の城主(園部)を攻めようとしていた。そして三村の城主、常春も兄に加勢のため三村城の本丸に集まっていた。その時、城の北方の入江で、すさまじい物音がするので、何事かと城兵が駆けつけてみると、大鷲(わし)と大鰻(うなぎ)がものすごい争いをしていた。大鷲は水中の大鰻をさらっていこうと空より舞い降りてするどい爪で攻撃し、一方大鰻は、そうはさせじと必死になって大鷲の首に体を巻きつけて締め上げていた。大鷲は、それをふりほどこうとおおきな翼をばたつかせ、水しぶきが大きく飛び散り、血が大きな渦巻きとなって辺りを渦巻いていた。やがて、鷲も鰻も疲れ果て、それを城の飯田七郎左衛門という兵士が撃ち殺し、城に持って帰ったのでした。
 鰻は体長五尺近くもあり、胴回りも一尺余りもありました。 また、その鰻は耳も歯も持っていたのでした。三村城で兵士たちは、出陣前にふしぎなことと思って、なにか不吉な予感も感じていたが、小川城(園部)を攻めるために船で出陣したのです。
 しかし、この不吉な予感は的中してしまうこととなった。小川勢に常陸国統一を狙う佐竹氏が見方にはいったため、大掾、三村勢は奮戦したが大敗してしまった。さらに悪いことに、城が手薄なのを見て取った小田天庵(つくば市小田)が千人の兵を率いて三村へ攻め入った。三村軍は万策つき、常春は四人の家来をつれて城から落ちのびたが、城のふもとの田に馬の足をとられ落馬してしまった。そして、ここぞとばかり小田勢は一気に常春の首をねらって攻めてきたのです。この時です、常春寺の上空にものすごい稲妻が走り、耳を覆いたくなるような雷鳴がとどろきました。追手は、体がすくみ、目もくらんでしまった。常春はこの間に、「今日を限りに」と叫び、自害したのである。若干25歳の若さであったという。
 その後、常春公は高久保に埋葬され、五輪塔が建てられた。そこには、椿の木が茂り、いまではひっそりとしている。また、大鷲と大鰻との亡骸が葬られた場所には鷲塚、鰻塚の地名が残った。
 一方、府中の城ではこの三村城の危急を聞きつけ、軍勢300余が駆けつけたが、近くの中津川台に到着して三村城を望めばすでに城は真赤な炎をあげて燃えていたのであった。常春公は府中の殿様の弟であり、助けることができなかったという思いでいっぱいになった軍兵の多くがその場で切腹して果てたといいます。
 そして後にここに一宇が建てられ「高野勢堂(こうのぜいどう)」といわれておりましたが、時が過ぎ、堂宇はなくなり、元禄年間(1688-1703)に六地蔵作られ、今も残っています。
 高野勢堂は香勢堂とも書かれているが本来は「国府(こう)勢堂」であろうといわれています。現在、六地蔵は対岸の旧三村城が見える北根本の香勢堂共同墓地の入り口に置かれ、地蔵の裏には197名と記載されています。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P40 〜 P44
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

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