茨城の民話Webアーカイブ

ヘッダーライン
あいうえお順検索
くわしい検索
ライン

検索結果にもどる

爪書き阿弥陀

ツメカキ アミダ

伝説

神秘的なおはなし|お坊さん、神主さん、小僧が登場するおはなし

原文

 高浜は霞ヶ浦が大きな内海だった頃から昭和初期まで、江戸までの物資輸送の水上交通としての常陸国国府の重要な港町でした。大和朝廷から常陸国にやってきた国司たちはまずこの港から船で一の宮である鹿島神宮に参拝に行くのが習わしでした。
 この高浜の町並みの中ほどに西光寺の阿弥陀堂(地元では西の観音という)が建っています。お堂の中には観音像とともに、1mくらいの自然石が安置されています。この石には昔から伝えられている話があります。
 それは、昔、常陸国で布教をしていた親鸞上人が、鹿島神宮に参拝のために、ここから舟に乗ろうとこの里にやってきました。そこに腫れ物で苦しんでいる一人の男がいました。その苦しんでいる様子を見て、上人は気の毒に思って「その苦痛を治してあげよう」と声をかけました。しかし、男は頑固者で「放っておけ、俺は天命を待つばかりだ。汝がごときにこの苦痛が治せるはずがない」と最初は聞き入れませんでした。上人は静かに念仏を唱えながら、その男の身体をなぜはじめました。すると不思議なことに痛みがみるみる引き、腫れ物もひいてきたので、男は驚いて、寝床より起き上がり、心より上人にわび、小麦の焼いたものを勧めました。やがて上人が西浦から舟に乗るために浦の岸辺にいくと、その男がやってきて「お蔭様で、現在の苦痛は治りましたが、未来の苦痛も取り除いて下さい」と懇願しました。すると上人は「極楽往生を願うなら、常に念仏を唱えることだ。また、汝の家の庭にある石は阿弥陀如来が宿っているから、今後はそれを信心するがよい」と言って船に乗り込んでいってしまいました。
 家に帰って男は庭の石を見てみると、そこには如来の尊像が浮彫りのように現れていたので大いに驚き、男はここに一堂を建てて、自ら「常願房」と称して上人に弟子入りしたのです。このため、この阿弥陀堂は「爪書き阿弥陀(如来)」として親しまれているのです。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P37 〜 P39
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

このおはなしが伝えられた地域