茨城の民話Webアーカイブ

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茨城童子(竜神山の鬼)

イバラキ ドウジ リュウジンサン ノ オニ

伝説

神様や仏様が登場するおはなし|お坊さん、神主さん、小僧が登場するおはなし|妖怪が登場するおはなし

原文

 竜神山は昔からこの地方の信仰を集めてきました。今はその姿が大きく変わってしまいましたが、石岡の町と八郷地区との境にそびえているこの山はこの地に大きな恵みをもたらすとともにそこを通る風の影響で北と南では時としてその気候も微妙に変化していました。この龍神山には大昔から竜神の夫婦がすんでおり、この竜神のおかげでふもとの井戸は枯れることも無く、遠くからも水汲みにたくさんの村人が訪れていました。また日照りが続き干ばつになると、人びとはこの竜神山の竜神様に祈りをささげ、麓の湧き水を汲んで腰につけた竹筒に入れて自分たちの村に帰って神棚に捧げ、更に祈りをささげるとその村に恵みの雨が降ると言われておりました。しかし、竜神山から自分たちの村に帰る途中で立ち止まり休むと、自分たちの村には雨が降らずに、その立ち止まった途中の村に雨が降ってしまうと言い伝えられていました。
 そんな中、今から1000年以上前に茨城童子と呼ばれている暴れん坊の鬼がこの竜神山にやってきました。茨城童子は京を荒らしまわった丹波大江山の酒呑童子(しゅてんどうじ)の第一の子分で各地の山を転々として各地の村々を荒らしまわっていたのでした。竜神山にやってきた茨城童子は大きな巾着(きんちゃく)袋をさげて、夜になると村に降りてきて里人をさらってその巾着袋に閉じ込め、大きな石の根締めで袋をふさぎ山に帰っていくのでした。さらわれた人は決して帰ってこないので人びとは、捕まった人はきっと茨城童子に食べられてしまったのだと恐れられていました。そして、やがて町の人々は夜になると外に出ることが無くなり、親の言うことを聞かない子供には「そんなわがままの子供は茨城童子がやってきて食べられてしまうよ」
というと、皆おとなしく親の言うことを聞いたといいます。
 そんなある日、都から来た人から大江山の酒呑童子が源頼光(みなもとのらいこう)や渡辺綱(わたなべのつな)などのすごく強い侍に退治されたという噂話が聞こえてきました。そして、この侍たちがこの地方にも鬼退治にやってくるとの便りが入ってきました。これを聞いた茨城童子は、あの親分の酒呑童子がやられたのでは敵わないと大きな体で震えあがって、大慌てで腰に下げていた巾着袋を放り投げ、近くの三角山を越えて逃げて行ってしまいました。
 この巾着袋の根締めの四角い石は遠くまで飛ばされて、万福寺近くの畑の中にめり込んでしまい、巾着石として今でも残されています。また、鬼が逃げて行った三角山は鬼越山(おにこしやま)と呼ばれ、今でも常陸風土記の丘の西側にあります。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P8 〜 P11
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

このおはなしが伝えられた地域