茨城の民話Webアーカイブ

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コグロ淵

コグロブチ

原文

天保の頃と言いますから、今から一五〇年以上も前のお話です。
花貫川の上流、花貫渓谷に不動滝があります。むかし、このあたりは、今に比べるとはるかに水量が多く、コグロ淵と呼ばれておりました。
ある日、近くに住む七郎衛門と言う人が、淵に釣りにやって来ました。
その日はなぜか、竿を下ろす間もなく、次々と魚が釣れ、あっと言う間に魚篭がいっぱいになってしまいました。
(しばしば来ているが、これほど魚が釣れだのは初めてだ。どれ、ちょっと一服するか。)
七郎衛門が、のんびりとたばこを吸っていると、滝から一匹のクモが出てきて、七郎衛門の足の親指に糸をかけ、また滝壷へと戻って行きました。クモは、三度、四度と同じことを繰り返しては、滝壷に戻って行くのです。
(おかしいぞ。これは、何かあるに違いない。)
いやな予感がした七郎衛門は、親指からそっと糸を外し、そばにあった大きな木の切り株に糸をかけ替えてしばらく様子を見ておりました。
すると突然、その切り株は恐ろしいほどの力でズズッ、ズズズーッと引きずられ、深い淵の底へと消えて行きました。そして、間もなく、滝壷の底の方からすごみのある不気味な笑い声が聞こえてきたのです。
七郎衛門は腰を抜かさんばかりに驚き、魚篭を手にすると、あわてて逃げ出そうとしました。ところが、釣った魚で一杯のはずの魚篭がやけに軽いのです。
見ると、魚篭の中は一変し、何と、釣った魚が一尾残らず枯れ木の枝に変わってしまっていたのです。またまたびっくりした七郎衛門は、魚篭を投げ捨てて一目散に山を駆け下りて行ったということです。

 

市町村 高萩市
原文著者 染谷 萬千子
原文著者(ヨミ) ソメヤ マチコ
生年 1947年
原文著者備考 1947年茨城県ひたちなか市生まれ
茨城大学教育学部美術科卒
1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。
1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展
1983年 水戸で第二回個展
1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展
原文著者 茨城いすゞ自動車
原文著者(ヨミ) イバラキ イスズ ジドウシャ
原文著者備考 発行
原文著者 朝日広告社茨城支局
原文著者(ヨミ) アサヒコウコクシャ イバラキシキョク
原文著者備考 企画
媒体 図書
収録資料名 ふるさとの昔ばなし
収録資料名(ヨミ) フルサト ノ ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 茨城の自然探訪シリーズ
民話ページ P219 〜 P219
収録資料出版社 茨城いすゞ自動車
収録資料出版年月日 2000.10.31
言語 日本語
方言 標準語
備考 非売品

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