佐野子の河童
サノコ ノ カッパ
原文
むかし、土浦市を流れる桜川に、いたずら好きの河童が棲んでおりました。
河童は、川遊びをしている子供たちを水の中に引き込んだりするので、毎年、川でおぼれる者が何人も出ておりました。
ある日の夕方、佐野子の若者が、苗代かきを済ませ、泥で汚れた馬を桜川に入れて洗っていると、突然、馬が暴れ出しました。
不思議に思い、馬をなだめながらまわりを見渡すと、馬の尻尾が何かに引っ張られているようなのです。
よく見ると、水の中から奇妙な形の手が出て、しっかりと馬の尼尾をつかみ、ぐいぐいと引き込もうとしているのです。
(さては、こいつがこの辺でいたずらをするという河童か。よし、生け捕りにしてやろう。)
若物は、気付かぬ振りをして、そっと近付き、河童の腕をしっかりと掴むと一気に引き上げました。そして、河童を縄でぐるぐる巻きにしばり、村に連れ帰ったのです。
河童を捕まえたという話を聞いて集まった村人たちは、日頃の恨みを晴らすために、河童を殺してしまおうと言い出しました。
そんな様子を見ていた満蔵寺の和尚さんが「みなさんの怒りはごもっともだが、わしが河童に二度といたずらをせんよう約束させるから、命だけは助けてやってもらえないだろうか。」と何度も訴えました。
村人たちも和尚さんがそれほど言うのならと納得しました。そのかわり、二度といたずらができないように、手を切り取った上で、自由にしてあげることにしました。
それからというもの、このあたりの桜川でおぼれる物はいなくなりました。
満蔵寺には、今もこのときの河童の手が納められていると言われます。
この河童の手は、雨乞いにもご利益があり、日照りで困った時に持ち出してみんなで祈ると、たちまち雨が降ったのだそうです。でも、あまりの効き目に、めったに人には見せられず、大切にしまってあるのだそうです。
市町村 | 土浦市 |
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原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P195 〜 P195 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |