ちくの種本
チク ノ タネボン
原文
むかし額田村(現在の那珂郡那珂町)というところにたっつぁいというちくぬき(うそつき)の名人かおりました。
その評判は、やがて水戸の殿様の耳にも届きました。殿様は、たっつぁいを城に呼びつけると、「名人といわれるおまえのちくを、ここで聞かせてみよ。」と命じました。
たっつぁいは、わざと息をはずませ、「あれまあ、そのようなことですか。急なお呼びでしたので、うっかり、ちくの種本を置いてきてしまいました。」
「では、すぐにその種本を取ってまいれ。」
そう言われたたっつぁいは、殿様のりっぱな馬を頭に浮かべ、「かしこまりました。でも、歩いて戻ると時間がかかります。できますれば、殿様の馬をお借りしたいのですが…。」と、おそるおそる申し出ました。
そして、殿様の許しが出るとすぐに、馬にまたがり、村へ帰って行きました。
しかし、待てど暮せど、たっつぁいは一向に戻る気配がありません。
業を煮やした殿様は、家来にたっつぁいを呼びにやりました。
「いったい、いつまでも待たせる気か。早く種本とやらを出してみよ。」
殿様にきつくとがめられたたっつあいは、すかさず、「殿様、ちくに本(本当のこと)などあるはずもございません。これが本当のちくぬき(うそつき)というものでございます。」と、いけしゃあしゃあとして答えました。
これを聞いた殿様は、「これはしてやられた。おまえのちくは天下一だ。」と誉め、たっつぁいにほうびとして大切な馬を贈ったということです。
市町村 | 那珂市 |
---|---|
原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P175 〜 P175 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |