茨城の民話Webアーカイブ

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ウルチがモチに

ウルチ ガ モチ ニ

原文

むかし、中妻郷に、怠け者の男がすんでおりました。
ある年、男は、田植の時期がせまっているというのに、苗の用意すらしておりませんでした。
でも、ちゃっかりと、よその家から苗を失敬して、さっさと自分の田んぼに植えてしまいました。
一夜にして、苗を全部盗まれた家では大騒ぎ—話は、あっという間に村中に広まりました。
そして、苗を作っていた様子もないのに、すっかり田植をすましているあの怠け者が怪しいと訴えがあり、領主の前で、お裁きをうけることになったのです。
男は、「絶対、盗んでおりません。」と言い張る上に、これといった証拠もなく、領主も困ってしまいました。
「ところで、お前の植えた苗の種類は何じゃ。」
「はい、モチでございます。」
「では、盗まれた苗の種類は。」
「はい、ウルチでございます。」
「秋に稲が実ればわかること。それまで裁きは待つことにしよう。」
男は、領主に聞かれて、とっさにモチと答えてしまいましたが、本当のところは何だかわからなかったのです。
(もうだめだ。このままでは、牢屋に入らなくてはならない。)
そう思うと、眠れぬ夜が続きました。
そんな時、ふと、愛宕山の天狗なら出来ないことなどないというのを耳にし、朝早く起きて、愛宕神社へのお参りを始めたのです。
(どうか、あの苗がモチでありますように…。と、毎日必死に祈り続けました。
そして、いよいよ裁きの日—領主が稲穂を調べてみると、まちがいなくモチだったのです。
男は、やっと解放されました。でも、何ヵ月も苦しんだ末に手に入れた勝利にも、男の心は晴れませんでした。
その日から、男は、心を入れかえ、一生懸命働きました。そして、お金をため、愛宕神社の参道に、石段を奉納したということです。

 

市町村 笠間市
原文著者 染谷 萬千子
原文著者(ヨミ) ソメヤ マチコ
生年 1947年
原文著者備考 1947年茨城県ひたちなか市生まれ
茨城大学教育学部美術科卒
1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。
1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展
1983年 水戸で第二回個展
1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展
原文著者 茨城いすゞ自動車
原文著者(ヨミ) イバラキ イスズ ジドウシャ
原文著者備考 発行
原文著者 朝日広告社茨城支局
原文著者(ヨミ) アサヒコウコクシャ イバラキシキョク
原文著者備考 企画
媒体 図書
収録資料名 ふるさとの昔ばなし
収録資料名(ヨミ) フルサト ノ ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 茨城の自然探訪シリーズ
民話ページ P164 〜 P164
収録資料出版社 茨城いすゞ自動車
収録資料出版年月日 2000.10.31
言語 日本語
方言 標準語
備考 非売品

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