たっつぁいの一目ぼれ
タッツアイ ノ ヒトメボレ
原文
ちくぬき(ほらふき)の名人として有名なたっつぁいは、若い時はなかなかの美男子だったそうです。
ある日、水戸の東照宮のお祭りに行き、美しい娘に一目ぼれしてしまいました。
娘の方も、たっつぁいに見とれておりました。
すっかり、娘に心を奪われてしまったたっつぁいは、それから何にも手につきません。それが、額田(那珂町)の名主の娘らしいと聞くと、さっそく額田村を目指しました。
さすが、名主の家は立派で、堂々とした門構えに圧倒され、たっつぁいは、門の前をうろうろするばかり……。
すると、そばの茶店の親切そうなお婆さんが出てきて声をかけました。
正直にわけを話すと、お婆さんは、「それなら、名主様のところで、釜たき男を欲しがっていたから、私か口をきいてあげよう。でも、そのかっこうでは…。」そういうと、たっつぁいにお爺さんの着物を着せ、顔にススをぬりつけて名主のところへつれていったのです。
昼は、一生懸命働き、夜は、風呂に入ってから部屋で読み書きの勉強をしておりました。
でも、たっつぁいはしばらく娘の姿を見ることができませんでした。
ある晩のこと、娘が厠に起きると、奉公人の部屋から明りがもれていました。
不思議に思ってのぞくと、お祭りの時に会ったあの若者がいるではありませんか。
その夜から、恋しさは日に日に募るばかりで、娘はとうとう寝こんでしまったのです。
どんな名医にも、娘の病は治せませんでした。困り果てた名主が、もう山伏に頼む他ないといっているのを聞いた茶店のお婆さんが、「その前に私が占ってみましょう。」と、占いのまねごとをしながら、「これは、恋わずらいじや。その相手は、奉公人の中にいる。」といいました。
名主は、さっそく奉公人たちを、娘の枕もとに集めましたが、何の反応もありません。お婆さんは、「名主様、私がお世話した釜たきの男を忘れてますよ。」そういうとたっつぁいを家へつれて帰り、着がえさせて娘のもとへつれていったのです。
娘は、たっつぁいを見るなり、顔をポッと赤らめました。
その後、二人は、めでたく夫婦になったということです。
市町村 | 那珂市 |
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原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P153 〜 P153 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |