雨を降らせた竜和尚
アメ オ フラセタ リュウオショウ
原文
むかし、那珂町北酒出あたりに、小さな寺がありました。
この寺のお坊さんは、村人から慕われ、尊敬されておりました。
ある日、よその寺で開かれた会合の席で、他のお坊さんたちとー緒にお経を読んでいる時このお坊さんの衣の袖が燃え出しました。
そばにいたお坊さんが気付き、あわてて水をかけると、稲光りがし、雷が鳴りひびきました。
この話を聞いた一人の高僧が、お坊さんをたずね、
「あなたは、ただの人ではないとお見受けしました。どこで修行を積まれたか、私に話していただけませんか。」と言うので、お坊さんは、
「実は私は、裏の池に長年棲む竜なのです。」と正直に打ち明けました。
高僧は、驚いた様子も見せず、「それはよいことを聞きました。つきましては、お願いがあるのです。ご存知の通り、今年は日照り続きでみんな困っております。駒形神社の神輿で雨乞いをしたのですが効き目がありません。このままでは、飢え死にする者も出るでしょう。あなたのお力で雨を降らせてもらえないでしょうか。」と頼むと、お坊さんは、「それは訳も無いことです。でも困ったことに、種水がないと本来の姿に戻ることができません。」と言うのです。そこで高僧は、そばにあった硯の水を取り、お坊さんめがけて投げつけました。するとお坊さんは、瞬く間に竜の姿になり、天高く昇って行ったのです。
空は、見る見る間に、黒雲におおわれ、稲妻が走り、雷鳴とともに、大粒の雨が降り始めました。この雨は、硯ですった墨のように黒い雨でした。
その後、高僧は、竜への感謝の気持を込めて、自分の住む寺の名を蒼竜寺と変えたのだそうです。
市町村 | 那珂市 |
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原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P145 〜 P145 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |