石岡市の北西部、八郷町との境に、龍神山という山があります。
むかし、この山の村上というところに男竜が、染谷というところに女竜が住んでおりました。
女竜は、月のきれいな夜になると、山を降りて柏原池のほとりを気ままに散歩するのを楽しみにしておりました。
女竜は、美しい娘に姿を変えていたので、このことは、いつの間にか、府中の町で評判になりました。
ある月夜のこと、石岡城の若侍が、この娘を一目見るなり、その美しさに、魂をうばわれてしまったのです。
それからというもの、若侍は、毎晩、池に通いつめました。
やがて思いが通じたのか、月の光の中で語り合う二人の姿が見られるようになりました。
でも、そんな幸せも長くは続かなかったのです。
ある夜、若侍は、澄んだ水面に引き込まれるように、池に落ちて死んでしまったのです。若侍の死を知った女竜は、嘆き悲しみ、もう決して、思い出の残る柏原池には、姿を現わさなかったということです。