むかし、花貫川の上流の大能村（高萩市大能）に、柴田勝之丞というたいそう腕のたつ猟師が住んでおりました。
ねらった獲物はほとんどはずすことがなく、もちろん、村には、勝之丞にかなうものはおりませんでした。それでも、勝之丞は、いつももっと腕を上げたいと思っておりました。ある時、勝之丞は、山のてっぺんにある岩のそばに、赤松を逆にさして山の神をまつり、「山の神様どうか私に力をお与えください。今年こそ、猪と鹿を千頭射止めさせてください。」と願をかけたのです。
その甲斐あってか、勝之丞の獲物の数は、日に日にふえていきました。五百、六百、七百、八百……そして九百九十頭目を射止めた時、勝之丞の願いが山の神に通じたのか、逆に植えた松に根が生えたのです。それからまもなく勝之丞は、千頭目の獲物を射止めることができたのだそうです。