むかし、権現山（現在の千代田村志筑）に、主といわれる大蛇がすんでおりました。
大蛇は、時々、里におりてきては、畑や民家を荒らしまわるので、村人たちは困りきっておりました。
ある日のこと、志筑城主の三男、保親が、家来をつれて鷹狩りにでかけました。
権現山のふもとにさしかかったとき、馬が急に何かにおびえたようすで前に進みません。
何事かと見ると、前方に大蛇が横たわり、道をふさいでいるではありませんか。
「村人を困らせている大蛇とはこいつだな。よし、成敗してやる。」勇かんな保親は、さっと馬から飛びおり、自慢の太刀をぬいて切りつけると、ひとたちで大蛇はまっぷたつ…。
すると、突然、空がかき曇り、不気味な風が吹きあれ始めたのです。保親たちは、鷹狩りをあきらめて、城へ引き返しました。ところが、保親は、その夜から原因不明の高熱で寝こんでしまったのです。その上、城内にも次々と災難が続き、人々は大蛇のたたりにちがいないとうわさするようになりました。
そこで、城中の者が、八幡様へ保親の太刀を奉納し、祈願したところ、保親の体も回復し、城内での災難もなくなったということです。そのときから、この太刀は「大蛇丸」といわれるようになったのだそうです。