むかし、水戸の殿様が、那珂川の河口近くに舟をうかべて釣を楽しんでおりました。
そのとき、お供をしていた家来が、誤って殿様の刀を川の中に落としてしまいました。そこで、もぐりの名人と評判の高い平磯の漁師が選ばれ、刀を探すことになりました。
漁師は、刀が落ちたと思われる川底にもぐってみたのですが、刀は見当たりませんでした。
海へ海へともぐっていくと、そのうち、海底で光がゆれ動いているのが見え出しました。
あれかな、と思い、どんどん近づいていくと、それは、まぶしいほどに輝く竜宮城だったのです。
漁師は、そこで乙姫様から手厚いもてなしをうけました。
美しい舞いと見たこともないごちそう…。
すっかり満足した漁師が帰ろうとすると乙姫様は、「あなたがお探しの刀はお返しいたします。その代り、ここでのことは絶対に他人には話さないでくださいね。」と、堅く口止めをしたのです。
漁師は、しばらくの間はその約束を守っていましたが、あるとき、うっかり友だちに竜宮での話をもらしてしまいました。そのせいかどうか、ある日漁師は漁にでたまま二度ともどらなかったということです。