とげ抜きの薬
トゲヌキ ノ クスリ
原文
むかし、山田(現在の北浦村山田)に、原政右衛門という人が住んでいました。
ある日のこと、政右衛門が近くの亀尻池のほとりを通りかかると、何やら子供たちが集まって、わいわいさわいでおり、近づいてみると、子供たちは、めいめいに棒をもって一匹の亀をつつきまわして遊んでいたのです。
心やさしい政右衛門は、「これこれ、小さな生きものをいじめちゃいけないよ。これで私にその亀をゆずってくれないか。」といって、持っていたお金を子供たちに渡し、無事を確かめると、亀を池にもどしてあげました。
しばらくして、政右衛門が、山に仕事にでかけたときのことです。つまずいて転んだはずみに、胸にとがった小枝を刺してしまいました。政右衛門は、自分で小枝を引き抜くと、やっとの思いで家へ帰りました。すぐに傷の手当てをしたのですが、奥の方にまだ小枝の先が残っているらしくズキズキ痛み、その夜は眠れませんでした。
明け方になって、少しうとうとした時、政右衛門の夢の中に、一人の老人があらわれました。
「私は、この前、あなたに助けていただいた亀でございます。もうだめかと思っておりましたところを本当にありがとうございました。実は、とげで苦しんでいるあなたを見て、ご恩返しをするなら今だと思い、出てまいりました。これからとげ抜きの妙薬をお教えいたしましょう。」と作り方をこと細かにいうとすっと消えてしまいました。目をさました政右衛門は、「ふしぎな夢をみたもんだ。とにかくためしてみよう。」と老人のいった通りに薬を作って飲んでみました。すると次の日の朝には、痛みはうそのように消え、そっと傷口をみると、胸からとげの先が顔を出していました。
それを抜くと、傷もすっかりなおってしまったのです。その後、政右衛門の作るこの薬は、よくきくと評判になり、多くの人々に感謝されたということです。
市町村 | 行方市 |
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原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P77 〜 P77 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |