今から二〇〇年程前、牛久沼のほとりに一匹のカッパが住んでおりました。ところがある日、誤って指を折ってしまいました。ちょうどその時辿りかかった医者がその指をひろい、家に持ち帰ってしまったのです。
カッパは困って、その指を返してくれるよう頼みました。しかし指は返してもらえません。とうとうカッパは、医者に交換条件を持ち出しました。
「指がなくては泳げません。もし返していただけたら、よくきく傷薬の秘伝をお教えしましよう。」…
カッパは指を返してもらうと、涙を流して喜びました。
それから二、三日してカッパは現れ、医者に傷薬の秘伝を教えました。
その薬は吸い出しにもよくきいて、馬が井戸に落ちた時、むしろに塗って蓋をしておいたら馬まで吸いあげたというのです。