茨城の民話Webアーカイブ

ヘッダーライン
あいうえお順検索
くわしい検索
ライン

検索結果にもどる

川岸のなで肩美人

カワギシ ノ ナデガタ ビジン

昔話

動物が登場するおはなし|神秘的なおはなし

再話文

この話は土浦市に住んでおられた方から聞いたお話だそうです。
むかしむかし、江戸の築地に源蔵という者がおりました。ある日源蔵は土浦の虫掛にいる知り合いに用があって築地からやってきました。知り合いとは久しぶりに会ったのでついつい話も弾んでしまい、すっかり日も暮れてしまいました。
「とんだ長居をしてしまいました。それではおいとまさせていただきます。」
と源蔵は用を済ませ、知り合いの家を発ちました。
帰り道、能西寺川(のうさいじがわ)※1の川岸を歩いていると左手の町の方に明かりが見えました。源蔵はほっとした気持ちになりました。すると誰もいないと思っていた土手の先に人影が見えました。その影を見ても歩いている様子はなく、立ち止まっているようでした。だんだんと近づいていくと徐々にはっきりと見えてきて、
「女一人での夜道か。」
とつぶやきました。
さらに近づくとその女性はほっそりとしたなで肩で、こちらに後ろ姿を見せていました。源蔵は
「まさか夜道で若い女性に出会うとは。」
と気になり顔を見てみたいと近くを通って振り返った瞬間、「トポーン」とその女性は川の中へ飛び込んでしまいました。
源蔵はびっくりして、川の中を覗き込みました。しかし姿かたちもなければ水のゆらぐ音すらしませんでした。
「あれ?あの女性はどこへ消えてしまったのだろう?確かにここにいたのだが……。」
源蔵は狐につままれた気分になってしまいました。
ある日、源蔵はこの晩のことを思い出し、知り合いに話しました。
「土浦で川沿いを歩いていたんだが、その時ほっそりとしたなで肩の若い女性の後ろ姿を見かけたんだが、近くで顔を見ようと振り返ったら『トポーン』と水の音がしたと思ったら突然消えてしまったんだよ。」
するとその話を聞いた人が
「源蔵さんよ、それはかわうそってやつでないか?きっとそうだよ。」
と言われたそうです。おしまい。

※1 今の土浦二高の裏を流れていた川

 

市町村 土浦市
旧市町村 土浦市
原文著者 本アーカイブのための書き下ろし
原文著者(ヨミ) カキオロシ
収録資料名 本アーカイブのための書き下ろし
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
言語 JPN
方言 標準語
備考 本作品は、以下の作品を参考にして書き下ろしたものです。
参考:岡部智子著(1932年生)土浦の民話 下 2005.05 筑波書林 pp.41-43 川岸の撫肩美人 原話話者 浅野智津子,塚本一夫

このおはなしが伝えられた地域