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しごとはべんとう(仕事は弁当)

シゴト ワ ベントウ

昔話

いじわるな人が登場するおはなし|こっけいな人・愚かな人が登場するおはなし

再話文

むかし、高萩市に住む人から聞いたというお話です。
のらしごとがすごくたっしゃなほうこう人がいました。そのほうこう人は大めし食らいで、おべんとうをおはちに入れて田畑に持っていっていたそうです。
近所の人たちは
「いやあ、おたくのほうこう人ははたらきものでいいねえ。」
とうらやましがったそうです。しかしその家の女主人は
「なあに、あの男がしごとをするんじゃないんですよ。べんとうがしごとをしているんですわ。」
とへんじしていました。それを聞いていたほうこう人は
「ああ、おれがしごとをするんじゃなくて、べんとうがするんだ。だったらおれは今日はばんのうぐわの先におはちを括りつけて一日中昼ねしてしまえ。そして日がくれるころにまた家にかえることにしよう。べんとうがしてくれるんだからそれでいいんだ。」
あたまの中で、そう思いながら田んぼへむかいました。
そしてほうこう人はばんのうぐわを田んぼにつきさして、おべんとうばちをくわにくくりつけて田んぼのへりで昼ねを始めました。
ほうこう人はお昼も食べずに「おべんとうがしごとをするんだからかまわない、おれは今日はしごとをしない。」と田おこしもせず、ごはんも食べず、ひたすらねていました。
とうとう日暮れになってしまい、家にもどることにしました。
このほうこう人は「ばんにんのう」※1 とよばれた力もちでした。ふだんはほんの一日で田んぼ一くかくをたがやしてしまうのですが、今日は女主人にいやみなことを言われたのでまったくはたらきませんでした。
家につきました。女主人は
「今日はれいのくかく、たがやしおえたのかい?」
と聞かれたので、ほうこう人は
「『あの男がしごとをするんじゃないんですよ。べんとうがしごとをしているんですわ。』っておかみさんが言っていたから、今日はばんのうぐわの先におべんとうをゆいつけて、昼ねをしていました。なので田んぼがどうなったかなんて私は知りません。おかみさんが見てきてください。」
と返しました。
おかみさんは余計なことを言ってしまったと思ったものの後のまつり。ほうこう人にそんなことを言われてしまうんだから、どんな時でも下手なことは言わないほうがいいのでしょうね。おしまい。

※1:「ばんにんのう」:漢字で書くと万人農。何人分も田畑を耕すことができる営農者のこと。(原話の話者が使用したことばをそのまま使用しました。)

 

市町村 高萩市
旧市町村 高萩市
原文著者 本アーカイブのための書き下ろし
原文著者(ヨミ) カキオロシ
生没 不明
没年 03.27年
生没 存命
媒体 その他
収録資料名 本アーカイブのための書き下ろし
収録資料名(ヨミ) カキオロシ
収録資料出版年月日 2019
言語 JPN
方言 標準語
備考 本作品は、以下の作品を参考にして書き下ろしたものです。
参考 高萩市教育委員会編 高萩の昔話と伝説 1980.10 高萩市役所 p.153-154 85 弁当が仕事
   原話話者 高萩市上手綱 長谷部さい(ハセベサイ)(1917生)

このおはなしが伝えられた地域