茨城の民話Webアーカイブ

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頭白上人伝説:生まれ変わって敵を倒す

トウハク ショウニン デンセツ ウマレカワッテ テキ オ タオス

伝説

お坊さん、神主さん、小僧が登場するおはなし|殿様や武将が登場するおはなし

原文

 大同年間に空海(弘法大師)は筑波山の徳一法師が建立した知足院中禅寺を再興し、筑波山の鬼門方向(東北=丑寅)にあたる東海村に村松山虚空蔵堂(神宮寺)を建て等身座像(虚空蔵菩薩)を彫って安置しました。その後この寺は戦国時代に常陸国を統一した源氏一族の佐竹氏の保護を受けて隆盛を極めていた。しかし、文明十七年(一四八五)に佐竹氏と岩城氏との交戦の舞台となり、そのときの兵火で多くの堂宇が消失してしまい、その後しばらく荒廃が続いた。
 その二年後にこの寺を再興したのが頭白上人であった。そして寺の名前も村松山日高寺と改めた。今でも最初の厄年が訪れる数え年の十三歳でお詣りする「十三詣り」が行われることで多くの参拝客がある。
 時は戦国時代。常陸国では佐竹氏と小田氏が大きな勢力争いをしておりました。頭白上人の生まれ故郷は筑波のふもとですから小田氏の領地に近い場所でした。頭白上人は生まれ故郷のこの地(石崎)で村松山虚空蔵堂再興の29年後に、自分を生んでくれた母親(賊に殺され、幽霊となって子供を生んだ)を供養するために五輪塔を建立するとともに、千部経をあげて7日間供養を行った。そして、供養が終わった後、そこに集まった多くの村人たちに説法をしていた時です。小田城主が供を連れて鷹狩に馬で通りかかり、この供養に集まっている人々を馬に乗ったままそこの人々を蹴散らし、無礼なふるまいの数々をしたのです。それに怒った頭白上人は
「この大切な儀式を、馬も降りずに無礼なふるまい、断じて許すことはできない。礼を知らぬそなたらはこれから先ろくなことは起こらないであろう!」
と大声で言い放った。
 怒った小田の家臣たちは、そこに集まっていた人々を自分たちに敵対するものだといって切捨て皆殺しにしてしまった。頭白上人は悲嘆にくれ、それ以降小田氏には憎悪の念を抱いて死んだといわれています。
 さて、頭白上人が亡くなってしばらく経った天文十六年(一五四七)三月に、佐竹家では後に鬼将軍と言われた十八代当主となる義重が生まれた。義重は自らこの頭白上人の生まれ変わりであると称し、生まれたときに頭白上人の形見の品を握り締めていたとも言われています。そして、宿敵の小田氏との戦いを繰り返し、ついに永禄十二年(一五六九)に手這坂の戦いで小田氏治に勝って小田城を奪取したのである。
 さて、この頭白上人が母親の供養のために建立した五輪塔は今も土浦市の旧新治村に残されています。場所は、筑波山の麓に、山肌がむき出しになっている採石場がある。そのすぐ隣に金嶽神社がありそこに置かれている。銘が刻まれているものとしては関東でも最大級の大きな五輪塔で、春にはきれいな桜が彩りを添えている。五輪塔は県指定の文化財であり、高さ三・六mの花崗岩製で、地綸に
「功徳主 頭白上人 大工本郷 永正十二天 二月三日」
と刻まれている。永正十二年=西暦一五一六年 である。
 永正十二年は室町時代末期で時代では北条早雲が三浦氏を滅ぼすし、相模を平定した年であり、この辺りは鎌倉御家人で勢力を持っていた小田氏が長い間支配していた場所である。
 佐竹氏が手這坂の戦いで小田氏治に勝った合戦は、石岡の片野城にいた武将「太田資正(三楽斎)」が大きな活躍をしたのである。この片野城跡も太田三楽斎の墓も山桜はらはらと舞い散る山郷の片隅に忘れられたように眠っている。

 

市町村 東海村
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 茨城のちょっと面白い昔話
収録資料名(ヨミ) イバラキ ノ チョット オモシロイ ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P3 〜 P7
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.12.1

このおはなしが伝えられた地域