茨城の民話Webアーカイブ

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木間塚長者

キマヅカ チョウジャ

伝説

やさしい人が登場するおはなし|子どもが誕生するおはなし|神秘的なおはなし

原文

 昔、尼寺ヶ原(にじがはら)の北方の北の谷というところに木間塚将監という長者が住んでいました。長者は非常に慈悲深く、困る人を助け、また信心深く、荒廃しかけていた国分寺の再建にも尽力しました。しかし、夫婦には子供が無く悩んでおり、伽藍御堂(がらみどう)の薬師さまに毎日願掛けをし、ついに瑠璃姫という女の子を授かりました。
 またこの長者の近くに幸作という夫婦者が住んでおり、こちらも子供がなく清水観音に願かけして女の子を授かりました。そしてその女の子に観音様の名前をいただいて「清水」と名をつけました。
 それからしばらくしたある日のこと、この長者の屋敷に強盗が押し入りました。あわや殺されそうになった長者を、この幸作という若者がわが身を犠牲にして助けたのです。それから年が流れ、この二人の女の子は美しい娘に成長しました。
 そんな頃、東馬という者がよからぬ計画をめぐらし、言葉巧みに城の宝刀を騙して盗んでしまいました。責任を感じた城の家臣の数馬は、この責任は自分にあると切腹してお詫びをしようとしたのです。するとそこにこの木間塚長者が現れ、盗まれた宝刀を差し出しました。驚いた数馬はその宝刀が見つかった理由をたずねたところ、長者は
「うたたねをしておりましたら、その夢の中で、「麓にいる鳥を射よ」とお告げがありました。そこでそのお告げにしたがって、麓の鳥を弓で射ると、鳥が落ちた場所にこの宝刀があったのでございます。」
と述べたのでした。
 命拾いをした数馬は大層喜んで、感謝の気持ちを伝え、何とか恩返しをしたいものだと心に留めていたのでした。それからしばらくしたある日、木間塚長者が瑠璃姫・清水の二人の娘を連れて遊山に出かけていた時に、突然鬼が現れ、二人の娘をさらっていこうとしました。この時、たまたま近くにいたこの数馬が鬼を追い払い難を逃れることができたのです。数馬は長者から大層感謝されたのですが、前に助けられた宝刀の恩返しができたことを大変喜んだのでした。
 そして、これも竜神社のおかげであると深く頭を下げたのです。

 

市町村 石岡市
原文著者 木村 進
原文著者(ヨミ) キムラ ススム
生年 1948年
原文著者備考 昭和23年 新潟県小千谷市に生まれる
現在 茨城県石岡市在 (株)アルテック 代表
昭和49年 慶応大学工学部大学院(修士)卒
大手電機メーカで設計などに従事、定年退職後ふるさとに眠る埋もれた歴史などを掘り起こし、ブログや書籍で活動をしている。
著書に「ちいきに眠る埋もれた歴史シリーズ」がある。「ふるさと風の会」会員
原文著者 LaLa mosura
原文著者(ヨミ) ララ モスラ
原文著者備考 イラスト 現在 茨城県石岡市 在 中学生 小学6年生の11月からイラストを描き始め、絵はすべてのモノに命があり、土や水にも顔があると考えて描いている。想像の世界のキャラクターたちがカラフルに描かれた独特のイラストが評判を呼び、地元を中心に個展を数回開いている。
媒体 zine
収録資料名 石岡地方のふるさと昔話
収録資料名(ヨミ) イシオカ チホウ ノ フルサト ムカシバナシ
収録資料シリーズ名 ふるさと風の文庫
民話ページ P63 〜 P65
収録資料出版社 ふるさと”風”の会
収録資料出版年月日 2016.9.1
言語 日本語
方言 標準語
備考 ¥750
収録資料シリーズ名および収録資料出版社は、標題紙による。
奥付には「風の文庫」「地域に眠る埋もれた歴史シリーズ(別冊1)」とある。

このおはなしが伝えられた地域