弥六が清水
ヤロクガシミズ
原文
むかし、下妻市高道祖に、弥六という作男がおりました。
弥六は、正直で働き者なので、弥六の主人も安心して仕事をまかせておりました。
ところが、いつの頃からか、弥六は、山仕事に行くと、決まって赤い顔をして、足もとをふらつかせて帰ってくるのです。
(近頃、弥六の様子がどうも変だ。山から帰ってくるたびに酒臭い。いったいどこで、どうやって酒を飲んでくるのだろう。そんなゆとりはないはずだが………。)
主人は、心配になり、ある日、こっそり弥六の後をつけて行きました。
主人が隠れて様子を見ていると、弥六は下草を刈ったり、山仕事に精を出しております。しばらくして、一区切りついたのか、弥六は仕事の手を止めると、すっと木立の中に消え、姿が見えなくなってしまいました。あたりを捜してみると、弥六は湧き水を飲んでおり、一向にその場所から離れようとしないのです。
主人が不思議に思って、そっと近づいてみると、弥六は赤い顔をしてすっかりご機嫌な様子。
「お前、いつもどこで酒を飲んでいるのだ。」
「ああ、旦那さん。ここでこの清水を飲んでいるんですよ。」主人がその湧き水を飲んでみると、酒どころか、ただの水なのです。
弥六は、その後も山仕事から酔っ払って戻ってくるので、とうとう主人はその清水に汚物を入れてしまいました。
すると、それから弥六は、酔って帰ることはなくなりました。
そんなことがあって、後にこの清水は"弥六が清水"と言われるようになったのだそうです。
市町村 | 下妻市 |
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原文著者 | 染谷 萬千子 |
原文著者(ヨミ) | ソメヤ マチコ |
生年 | 1947年 |
原文著者備考 | 1947年茨城県ひたちなか市生まれ 茨城大学教育学部美術科卒 1973年から1999年まで約26年間朝日広告社茨城支局に勤務し、新聞広告他制作を担当。1981年から茨城の自然探訪シリーズ「ふるさとの昔ばなし」を制作。現在も継続中。余暇には、旧姓岩谷萬千子で版画・アクリル画の政策に取り組む。 1977年 日本板画院展新人賞受賞 水戸で第一回個展 1983年 水戸で第二回個展 1990年 いすゞギャラリーで「ふるさとの昔ばなし」版画展 |
原文著者 | 茨城いすゞ自動車 |
原文著者(ヨミ) | イバラキ イスズ ジドウシャ |
原文著者備考 | 発行 |
原文著者 | 朝日広告社茨城支局 |
原文著者(ヨミ) | アサヒコウコクシャ イバラキシキョク |
原文著者備考 | 企画 |
媒体 | 図書 |
収録資料名 | ふるさとの昔ばなし |
収録資料名(ヨミ) | フルサト ノ ムカシバナシ |
収録資料シリーズ名 | 茨城の自然探訪シリーズ |
民話ページ | P209 〜 P209 |
収録資料出版社 | 茨城いすゞ自動車 |
収録資料出版年月日 | 2000.10.31 |
言語 | 日本語 |
方言 | 標準語 |
備考 | 非売品 |